2016.07.17-18 前穂高岳 北尾根四峰正面壁 北条・新村ルート 敗退
前穂高北尾根は、ピークから横尾谷に向かい2峰~8峰の大きな起伏の岩峰が規則正しく並んだ美しい尾根。
北条・新村ルートはその4峰の正面壁にある登攀ルートのひとつである。
昨年、リーダーの片渕さんからこの話を聞いて初めて知ったが、調べてみると有名なクラシックルートのようだ。
アプローチが長く、ズタズタの雪渓を越えて取付く先には大小のハング、垂壁のトラバース... 。
自分の力量から考えると困難のオンパレード。
ちょっと行きたくないような気持ちになったが、資料の説明に「岩の弱点をついた見事なルート」とあり、見事な登攀ラインとはどんなものか知りたいという好奇心と、初登した北条理一氏が同じ関西人という勝手な親近感で一気に行きたい気持ちに傾いた。

b前穂高岳北条、新村 024


前穂高岳 北尾根四峰正面壁 北条・新村ルート 敗退報告
実施日:2016年7月17日(前夜発日帰り) 参加者:4名

行程:
7/16(土)19:00大阪~23:30ほうのき平(仮眠)
7/17(日)06:00上高地~07:30徳澤07:50~09:15中畠新道分岐~11:30松高ルンゼ2200m地点(下山決定)~12:00中畠新道分岐~15:00上高地

前夜早めに大阪を出発。 ノンストップで飛騨のほうのき平へ。いつも往路の運転を引き受けて下さるTさん、仮眠用のテントまで準備して下さりありがとうございます。 すぐに設営し天候を確認すると、17日はくもり一時雨、18日は晴れ。
梅雨時期の山行で心配していたが、空には月も見えている。なんとか行けそうだと皆で安堵しさっさと寝ることにする。
今回は全装を担いでの登攀。軽量化のためシュラフやマットは持参していない。よって打合せが終わるとそのままごろんと転がり即就寝。
翌朝4時半起床。パッキングを済ませていつもお世話になっている平湯のタクシー会社に車を預け上高地へ。馴染みの運転手さんにメロンパンを差し入れしていただき車内で朝食を済ます。もう何度お世話になっただろう? 最近はこのオジサンに会うのも穂高に来る楽しみの一つにもなっている。

上高地バスターミナルで登山届を提出し歩き出す。鉛色の空からは今にも雨が降りそうだ。かっぱ橋から穂高の勇姿は見えない...。少々残念な出発だが、梓川はいつものように青く澄んで美しかった。最近ではうんざり気味の徳澤までの道のりを、初夏の花の写真を撮りながらやり過ごそうと思っていたが、健脚揃いのメンバーは朝イチからガンガン歩くので追い付くのが大変だった。
お陰様でコースタイムより早く徳澤園に到着。ご褒美のソフトクリームを食べながら天候を確認。 先ほどから雨がしとしと降りだしたが予報は変わらず曇り。そのうち止むだろうとこの時は一同楽観的な気持ちだった。
新村橋を渡り、パノラマ新道分岐の通行不可の看板をくぐり抜けるといよいよ取付に向けての長い長い登りが始まる。
ナイロンザイル事件の若山五郎氏の慰霊碑前で下山者とすれ違う。 奥又白は前夜からずっと雨で、登攀を中止して下りてきたとのこと。
一瞬微妙な空気が流れるものの、多少の雨は承知していたのでそのまま先へと進んだ。 男性陣は意気揚々と更にペースを上げて登って行く(鈍足の私は必死)。
メジャーな穂高にして昨年秋以降まだ人の往来の少ない登山道は雨に濡れた草が生い茂り、通過するのにレイン上下を着込まなければ先に進めなくなった。
高畠新道分岐で樹林帯を抜け視界が開けると、思っていた以上に雨が激しく降っていた。正面に見えるはずの松高ルンゼ、右手の慶応尾根はガスでぼんやり...。
足元に咲くニッコウキスゲが唯一の慰めとばかりに咲き乱れていた。
ここで初めて今後の予定について協議する。 このまま天候の回復が見込めずガスも晴れないなら雪渓のトラバースは危険。 ビバーク地までの登攀も困難が予想されるため、計画を変更しA沢を詰めて前穂を登頂しようと打合せする。
座れないので立ったまま行動食を摂ると、雪解け間もない不安定なガレ場を慎重に通過し、いよいよ奥又白への急登に取付いた。
二足歩行から四肢を使っての登高に変わった途端、レインウェアの中は汗でぐっしょり、アンダーウェアまで濡れて不快極まりない。濡れた小薮を歩いたせいか靴下も濡れて嫌な気分。一人なら悲しくなるような惨めな姿だが、皆でアカモノやクロウスゴの果実をつまみ食いしながら雑談していると何故だか楽しい。
とは言ってもなかなか緊張を強いられる登りで、危険個所ではお互いに声かけをしながら標高を稼ぎ、あっという間に奥又白谷の滝が見える地点まで到達した。その後間もなく奥又白からの最後の撤退者だというパーティーに遭遇。状態はかなり悪い模様だった。ここで再び雨雲レーダーを確認。朝の天気予報から一変、梅雨前線が近づいて濃い雨雲が絶え間やてって来ていると判明。
ここで北条・新村ルートは絶望的であると片渕さんが判断。明日の登攀が中止になると知ると、にわかに今宵のビバークをどうするかが気になり出した。 今回の装備はツェルトと薄手の銀マットとシュラフカバーのみ。予想最低気温は7℃。
多分寒くて眠れないだろう。 昨年秋に奥又白で雨に降られた時はテントが浸水して大変だったことが頭をよぎる。 今日はエアマットが無いから横になって休めそうにない...。
最悪なのは雨で全員衣服が濡れていること。 ツェルト2張でガスセット1個では暖のとりようもない。 低体温症になったら?
様々な不安が頭を過った。メンバー全員が同じようなことを考えているのか、しばらくは寡黙になって淡々と登りをこなしていった。
松高ルンゼの終了点と合流するあたり(恐らく標高2200m付近)で、リーダーから「下山しようか」の一声。この先は2~3級程度の岩稜帯が続くため、この悪天候で安全に下降できるギリギリのラインで判断されたのだろう...。一同リーダーの決定に同意。
出発してしまったのに申し訳ないとの言葉があったが、メンバー全員の安全を第一に考えて下さるリーダーで本当に良かったとしみじみ思った。 明日の予報が晴れだけに、下山の決定には大いに悩まれたに違いない。
夏の本チャン初参加を楽しみにアブミトレに精を出して来られたMさんは一番残念だったに違いないが、必ずまた来ようと皆で握手を交わしてして踵を返す。
切り替えが早いメンバーばかりで、撤退となるといつもの陽気な雰囲気に戻り道々の花を愛でながら往路を引き返した。 明神で雨が止みようやくレインウエアから解放された。靴下を絞ると信じられないほど水が出て皆大笑いする。
上高地では急な予定変更に快く対応してくれたタクシーの運転手さんが湯がきたての温かいとうもろこしを手に出迎えてくれた。何故だかほっとした。 「無事が一番、またおいで」の言葉に一同大きく頷く。

帰路の車中で、出発前の天候予測、行動中止の判断、 必要装備、今後の練習課題について皆で十分話し合った。
先輩二人とは数年来ご一緒しているが、毎回反省するネタが尽きることはない。 成功しても失敗しても真摯な姿勢で振り返り、次に繋げようとする先輩方を私も見習いたい。

敗退も経験の一つ。
雨の穂高を9時間彷徨い帰って来たことも、来年リベンジできた時には笑い話として楽しく思い出すだろう。
その日を楽しみに待ちたい思う。
以上
この記事のURL | クライミング(岩登り) | CM(0) | TB(0) | ▲ top
<<2016.07.17-18 中央アルプス与田切川・アズキ沢/沢登り | メイン | 2016.07.17-18 前穂高岳4峰正面壁登攀>>
コメント

コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する


▲ top
トラックバック
トラックバックURL
→http://safuran123.blog16.fc2.com/tb.php/505-59732209
| メイン |