2017.08.11-14 剱岳八ツ峰縦走
- 2017/08/19(Sat) -
劔岳 八ツ峰下半縦走
[日程] 2017年8月11日(金)~14日(月)前夜発 
[参加] 2名

※当初の計画は八ツ峰をⅠ峰から八峰まで縦走し、途中でⅥ峰Cフェースも登攀する予定だったがアクシデントが多々あり八ツ峰は下半縦走のみになりました。

8月10日(木) 20:30大阪 → 北陸道 → 翌1:00 立山駅(仮眠)
 
8月11日(金) 曇りのち雨
6:50 立山ケーブル、高原バス→8::10室堂(2420m) →10:50劔御前 (2780m)→11:30劔沢キャンプ場 12:10 →13:10平蔵谷出合 → 14:00 真砂沢キャンプ場(1749m)(泊)

8月12日(土) 雨
5:00 真砂沢キャンプ場→6:00長次郎谷出合→7:00.間違いルンゼ取付 →13:00ルンゼ2250m地点→ルート修正 →1700 Ⅰ峰直下台地(2600m)(泊)

8月13日(日) 曇り時々晴後雨
5:00 Ⅰ峰→8:50Ⅱ峰→9:50 Ⅲ峰→10:40 Ⅳ峰→12:00 Ⅴ峰→13:30 Ⅴ,Ⅵノコル13:45→長次郎谷、劔沢雪渓→18:00劔沢キャンプ場(泊)

8月14日(月) 曇り一時雨
7:30劔沢キャンプ場→10:50室堂 帰阪

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劔岳は古来より山岳信仰の聖地であり、氷河期に形成された氷食尖峰は「針山地獄」と呼ばれ立山連峰の他の山から拝するのみで長年立ち入ることが許されていなかった神聖な山。
明治40年に初登されて以降は「岩と雪の殿堂」と称され、谷川岳、穂高連峰とともに日本三大岸壁としてクライマーの聖地となっている。

今年は6月の前穂北尾根も中止になってしまった。夏は何をしようかと悩んでいたところ、登攀要素の少ない八ツ峰全縦走はどうかとTさんから提案があった。山の日が週末と重なり例年より長く休みが取れたので絶好のチャンスだと大喜びでチャレンジすることにした。

20:30に大阪を出発。立山で3時間ばかり仮眠をとり、始発のケーブルに向かうと、予約客と夜通し並んでいた乗客に先を越され6:50発の臨時便になってしまう。
雷鳥沢テント場
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室堂から劔御前までは雷鳥坂と別山尾根があるが、急登でも距離の短い雷鳥坂を選択。 テント泊装備に登攀具とアイゼン、ピッケルを担いでの登りは想像通り辛かった。一回り小さい一般登山者のザックをうらめしい気持ちで眺めながら劔御前小屋へ着く。
山岳警備隊劔沢派出所で雪渓の状況を確認するとⅠⅡ峰間ルンゼはクラック、崩落でズタズタのため立ち入り禁止と判明。
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もう少し詳しく知りたかったが、先ほど救助搬送で隊員方がたくさん雷鳥沢に下って行ったのでキャンプ場の方に天気予報だけ確認し、取付により近い真砂沢まで行くことにする。
派出所の案内板どおりに左や右に移動しながら劔沢雪渓を下る。
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平蔵谷や源次郎尾根を見物しつつ真砂沢小屋へ。今季は雪がかなり多かったようで雪崩で小屋が崩壊し、つい最近再建したばかりとご主人から話を聞いた。
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長次郎谷の状況を聞くとやはりⅠⅡ峰間ルンゼはスノーバーで支点を取っても取り付くのは困難だと聞く。まず明日現地で様子を見ようと決めてテントで昼寝をしていると雨が強く降りだしてきた。 そのうちに三ノ窓雪渓方面からブルーの県警ヘリがやってきて山域上空を何度も飛ぶのが見えた。 誰か遭難したようだ。我々も明日は気を付けようと早々に食事を済ませ18:40就寝。


8/12 翌朝3:00起床。まわりのテントもクライマーばかりだったが、ほとんどが定着スタイルで軽尼荷で登攀に行く様子だった。降水確率が80%のため沈殿を決め込んでまだ寝ているテントも何張か見られた。
日の出後雪渓のガスが抜けたタイミングで行動開始。劔沢雪渓を登り返し長次郎谷に入った途端、一ノ沢側の壁から2m四方大の岩がドスンと落下してきて恐ろしい思いをした。
こんなところに留まりたくなかったが、雨が降りだしたのでピッケルで支点を作りバックアップをとりレインウエアを着込む。予習では雪渓の3番目のルンゼがⅠⅡ峰間と調べたはずなのに、視界が悪いのと雨で焦っていたこともありGPSで位置確認することなくひと手前のルンゼに取付いてしまう。
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雪渓が大きく崩落しているため、左側から右に下りながらトラバースするが、雪が固くピックがなかなか刺さらず焦った。 久しぶりにアイゼンに全神経を集中させて突破。
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岸稜帯を上から巻くか雪渓の下を通過するか協議の結果、落石に当たる確率の低いルンゼの雪渓ブリッジ下部を通過した。
ルンゼの左側を5mほど垂直に登り、傾斜の緩い右側に向かってバンドを慎重に通過。スラブが雨に濡れてツルツルなため早くもザイルを使用。ここまで来るのに1時間を要した。
見通しの良い場所で長次郎雪渓を見ると、クライマー達が続々と下降してくるのが見えた。間違えている事に全く気が付いていない自分たちのことを棚に上げて、この雨ではクライミングは無理だろうと呑気にながめて先に進む。調べた記録では右から傾斜の緩い岩を左上となっていたので、ここだと思われるところを登って行く。2、3手登り方を見ていると難しそうで、私は突破できないと判断しで別ルートを探すとコールした。やや左側の露出した岩の細かいスタンス拾って登ることを告げると、転落時の距離がかなりあるので確保すると指示があり、ザイルが降りるのを待って乗越す。
その後次第に岩の傾斜が強くなり、登れそうなラインを相談しながら登高していくと、藪に行き詰まってしまう。足が濡れてしまうが他に登路がないので藪中の水の流れるルンゼをさらに左方へ登って行くと草付の斜面に出た。
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更に左側の岩をTさんが5mほど登ったところで「ここはアカン降りる」と声がかかり、私も後続で登っていたが、1mほど下降して足場を踏み固めて肩がらみで確保した。セルフを取るような物は何もなく落ちればもろともだな思った。雨だから難易度が上がるにしてもこれほどザイルを出さないと登れないのは変だ、ルートを外したに違いないとようやく気付く。
安定した場所を探してザックを下ろしGPSを確認すると、ルートを外したのではなく、一つ手前のルンゼに入っていたと判明! これからどうするか緊急会議。今まで辿ったルートを思い返すと、残置ハーケンや支点にできそうな灌木は何も無かった。フリーで下降できる自信はゼロ。落ちるのが容易に想像できた。退路は経たれこの先何があるか全く不明ではあるが、幸い現在地が分かっている。地図の等高線を細かく読み崖マークの切れ目を探すると、多少右往左往しても稜線まで行けそうだ。
二人で諦めずⅠⅡ峰間ルンゼを目指して左の断崖絶壁を越えようということになった。
そもそもどこも登山道ではないので、人の登ったルートをトレースするか、自分たちで探して登るかの違いに過ぎないと状況を前向きに捉えると不思議とモチベーションが上がった。
その後ずっとアンザイレンでTさんが登路を探し、私が後方で地図と方角を確認するスタイルで草付きと岸壁を幾度となく登った。稜線上の等高線の幅が一番広い場所を狙って、崖にぶち当たってはルート修正する作業を約10時間続けてハエマツの激藪を突破するとⅠ峰直下の小ピーク右側の稜線に出た。
三ノ窓側に5mクライムダウンするとチングルマのお花畑が広がる斜面に3畳ほどの平な台地があった。ここがⅠⅡノコルかどうかはさておき(多分違うが)、今晩の寝場所が見つかり心から安堵した。
偶然見つけたこの場所は後立山連峰を見渡せる最高な場所だった。もう日没で疲れたので今日はとにかく休むのが先と、テントに入って濡れた靴を脱いだ。靴ずれで両足の指6本にマメができて潰れていた。手のひらも傷だらけで血が出ている。行動中は集中していたので気付かなかったがほっとした途端あちこち痛い。Tさんも同じで、各自絆創膏とテーピングで応急処置を済ませて他の濡れた服や装備をテント内で吊るしてガスを焚く。
今日中にⅤⅥノコルに行くつもりだったので水が心配だったが、二人合わせて約4リットルあるので節制すれば何とか足りそうだった。夕食はあまり水を使わなくて良い物で済ませる。とりあえず寝ないと体力が回復しないので、アルコールを飲んで20:00就寝。


8/13 3:00起床。後立連峰に光が差した。
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服も靴も靴下も、なにもかも乾いておらず身に付けると冷たく気持ちが悪い。
神秘的な薄明の後立の景色を眺めつつテントを片付け、視界が良くなるのを待って行動開始。
はて、どうやって前進するのか? 草付きに巻き道がないか三ノ窓側、長次郎側ともくまなく探してみるが踏み跡などひとつもなかった。小ピークに登って確認すると、サビたハーケンが1本あったが、Ⅰ峰方向に懸垂する向きなので下降してはいけない。
2時間ウロウロ探し果てた末、Tさんが意を決して細い稜線通しに行こうと決断されたので、同意して後に続く。
切れ落ちた岩峰を慎重に下降するが、深い藪で足元が見えないので下り過ぎず水平に次の岸峰に向かった。ようやくⅡ峰が目前になった尖峰で行き詰まった。三ノ窓側に支点があったのと、藪の崖の5mくらい下にうっすら土が見えたので懸垂してみるが、そこは窪んだテラスで右にも左にも行けない。もう一段何かありそうだったので更に1mほど下降してみたが、そこはわずかな岩の出っ張りでしかなかった。ただその右手前方に立てそうな岩のバンド帯があるのが見えたので頑張れば行けそうだ。必死に元いたテラスまで登り返してみるが荷物が重くなかなか困難だった。落ちないように下降器の下のザイルを結んで固定してからもがき登る。やっとのことでテラスに戻り状況を伝えると、Tさんがテラスまで下降してきて先に進んでくれることになった。振り子トラバースで見事岩に乗れたのが見えたので私も続いて移動するが先ほどの登り返しで腕がパンプしてしまい、あちょっとのところで振り戻されそうになり「手を引いてくださーい!」と大騒ぎして着陸。
やっとのことでⅡ峰基部へ。いきなり快適な岩稜帯が現れ先ほどまでの苦労は何だったのだろうというほどの差だ。青空も広がりにわかにテンションが上がってきた!
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ピークからは懸垂2本で下降。Ⅲ峰も爽快な気分でフェイスを登り下降は空中懸垂で高度感満点だった。
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Ⅳ峰間に小ピークがあり思わず登ってしまったが正解は長次郎側をく。引き返してハエマツ沿いにⅣ峰を登る。Ⅳ峰は三ノ窓側のガレ場を懸垂下降
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前方のルンゼの右斜面を登りⅤ峰ピーク直下から直登した。Ⅴ峰の懸垂支点は素晴らしいロケーションでチンネ、クレオパトラニードル、北方稜線から本峰までの険しい氷食尖峰群が圧巻だ。長次郎雪渓上には熊ノ岩が間近にえ、その先に源次郎尾根と平蔵谷の上部が見える。
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Ⅳ峰で出会った名古屋の山岳会の方が先に下降される間、ゆっくり景色を楽しんで過ごした。
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順番が回ってきたので4回の懸でⅤⅥのコルに降り立った。時間は既に13:30。残りの水はわずかで熊ノ岩に取りに行くかどうか考えているうちに小雨がパラパラ...時間が押しているので、一気に北方稜線に抜けて稜線ビバークするか縦走を中断するか相談の結果、ここは無理をせず長次郎谷を下って劔沢キャンプ場に戻ることにした。オコジョ発見。
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長次郎谷を下る。
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アイゼンを装着して長次郎谷出合から劔沢雪渓を登り返すとガスで視界がなくなった。水は無くなり喉がカラカラだ。靴ずれで痛む足を引きずり劔沢小屋までたどり着きやっとの思いでコーラを飲んだ。劔沢キャンプ場でテントを張った途端雨が降り出してきて改めて撤退したのは正しい判断だったと納得する。
剣沢キャンプ場
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後は帰るだけ。途端に気楽な気分になり出来る限りの食料とアルコールを消費して就寝。


8/14 4時起床。 外の景色を撮影。
テントに明かりが灯る
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別山尾根を剱岳に向けて登山渋滞が続いていた。
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先の行程が短いのでゆっくり準備をする。キャンプ場で朝のラジオ体操が始まったが、足腰が痛み屈伸ができないので早々にギブアップ(笑)。
目の前の剱岳
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剱岳を後にした
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小屋のベンチで休憩し靴ずれ箇所を補強してから雷鳥坂を下る。疲れた体には堪える雷鳥沢からの階段を登り返し10:50分室堂バスターミナル着。帰阪後、正しい登路を地図で教えていただき私達が登ったラインと照合するとかなり余計に尾根を徘徊していたと分かった。悪天候で視界の悪い時こそ現地で丁寧にルートの確認をしなければいけないと、基本的なことではあるが身を持って思い知った。
これまで行ったバリエーションルートの中で、今回のⅠ峰までの登路が過去最高に困難で最高に達成感のある山行になったと思いました。  以上
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